川崎・空家再生
(耐震・断熱改修)
昭和30年代に建てられた民家の断熱改修と耐震改修に挑戦しています。
民家や空き家を再生させるためには、まずその建物を保存したいという気持ちがどれだけ強いかが重要です。
この住宅は年月の経過による劣化が至る所に見受けられますが、元々の住人が愛情を込めて守り続けてきたことが非常によくわかります。 それを次の世代が受け継いでいくことが大事なことと考えています。
日本の気候に適した場所で建てられた伝統的な家屋は、まだまだ再生価値のあるものが多く残っています。
特に縁側などの独自の建築様式は、冷たい季節にも十分な暖かさを提供し、夏には涼しく風通しが良い空間を提供します。庭と調和した縁側を通じて、四季の変化を楽しむことができ、これは伝統的な日本の家屋ならではの贅沢な経験です。
ただし、冬の夜には日中の暖かさが失われ、夏の蒸し暑さも忍耐が必要です。これらの課題の一因は、かつての民家ではあまり重要視されていなかった断熱性や気密性などの要因です。したがって、これらの性能を向上させるために、伝統的な家屋の再生プロジェクトでは、耐震性と同じように慎重に検討し、補強する必要があります。
民家の歴史を尊重しながら、現代の生活に合った性能を取り戻すことが、伝統的な家屋や空家の再生プロジェクトの魅力の一つです。
縁側に畳、古き良き民家を長く使いたい
工事前の縁側の温度分布。非断熱の古い民家の欠点は耐震工事と共に断熱リフォームを行うことで解消。
地震やシロアリによる建物の劣化は、補修すれば良いことです。それが自由度の高い木造の良いところ。
ほぼスケルトンの状態まで解体し、劣化部分を探し出す。
屋根裏にはスズメバチや鳥の巣がいくつも。
脱衣室兼用の廊下。改良の余地は大いにあり。
解体中の土壁。土壁本来が持つの調湿性、柔軟性をできるだけ残しつつ、補強が必要な箇所は合板や筋交いで置き換えていく。
床下も改良し、木炭による塗装で消臭、白アリ対策。同時に、汎用エアコンを使った床下からの空調により、広い範囲を一台のエアコンで冷暖房が可能。直接風を浴びない、輻射による快適性が体験できます。
DIYによる壁の左官塗は、家に対する思い入れを高める良い方法。
古い建具と新しい建具の色合い違いは、時間と共に差が縮まっていきます。
ひび割れの激しいモルタル外壁の補修と、新たな下見板張りにより古臭さを打ち消す建物正面のデザイン。
北側の天窓周りは、夜間の淡い間接照明として役に立ちます。
キッチンのタイル張りもDIYの楽しみの一つ。
暗く湿度の高い北側の水回りは、天窓のある一体のLDKとして明るく広々と使えます。
土壁解体時の土は、庭の築山として再利用。
仕上げ材でもある黒板は、常に場所の奪い合い。
子供たち作の木タイル。材木屋から頂いた木っ端に絵の具で着色。
もともとの真壁を残しつつも、好みに応じた変化を作っています。
縁側は暑さ寒さをリビングに通しにくくする役割の他、外からの視線も程良く遮ります。
玄関のコート掛けは、庭の小枝で作成。
断熱補強のお陰で快適に冬を越せます。
最もコスパの良い空間演出としての照明計画
輻射断熱の併用で、厚みの確保が難しい納まりを解決します。静止空気層の確保が大きな検討点。
玄関は必要以上の収納は設けずすっきりと。
寒い勝手口のあった北側台所が一変し、温かい雰囲気のダイニングに。
朝の陽ざしが強い東側の寝室には、あえて大きな窓を設けず地窓と天窓で採光を確保しています。広い壁面はプロジェクター用のスクリーンとしても利用できます。
50年以上天井裏に眠り続けていた小屋梁が今では大事な室内の要素として活躍しています。